生成AIが量子回路を書く?GQEとその展開を5本で解説【2026/09/29】

2026-09-29 / arxiv 量子コンピュータ論文解説


概要

期間限定特集「生成AIで量子計算をつくる」初回。NVIDIAの中路紘平氏らの生成量子固有値ソルバー(GQE)原論文から、条件付き生成による組合せ最適化、水分子のオージェスペクトル計算、回路切断コスト制約つき生成、コルモゴロフ・アーノルド網による軽量化まで、比較条件と限界を含めて解説します。

▼ 今日の論文ラインナップ ・生成量子固有値ソルバーによる基底状態探索の提案 — トロント大学・NVIDIA・慶應義塾大学ほか(arxiv:2401.09253) ・条件付き生成量子固有値ソルバーによる組合せ最適化 — 産業技術総合研究所・NVIDIA・トロント大学(arxiv:2501.16986) ・生成量子固有値ソルバーで計算する水分子のオージェスペクトル — 三菱ケミカル・みずほリサーチ&テクノロジーズ・NVIDIAほか(arxiv:2603.12859) ・回路切断のオーバーヘッドに上限を課した生成量子固有値ソルバー — PwCコンサルティング(arxiv:2509.08351) ・量子着想コルモゴロフ・アーノルド網による生成量子固有値ソルバーの軽量化 — 台湾国家高速網路與計算中心・NVIDIAほか(arxiv:2605.04604)

▼ 参考論文(arXiv) https://arxiv.org/abs/2401.09253 — 生成量子固有値ソルバーによる基底状態探索の提案 https://arxiv.org/abs/2501.16986 — 条件付き生成量子固有値ソルバーによる組合せ最適化 https://arxiv.org/abs/2603.12859 — 生成量子固有値ソルバーで計算する水分子のオージェスペクトル https://arxiv.org/abs/2509.08351 — 回路切断のオーバーヘッドに上限を課した生成量子固有値ソルバー https://arxiv.org/abs/2605.04604 — 量子着想コルモゴロフ・アーノルド網による生成量子固有値ソルバーの軽量化

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arXiv量子コンピュータニュース(2026年9月29日)

キーワード: 生成量子固有値ソルバー / 自己回帰トランスフォーマー / 選好最適化とGRPO / 条件付き回路生成 / 回路切断オーバーヘッド / 量子選択配置間相互作用

オープニング:2026年9月29日 — arxiv量子コンピュータ論文解説

今日から10月9日までの期間限定特集「生成AIで量子計算をつくる」を始める。初回は、中路紘平(Kouhei Nakaji)氏らが提案した生成量子固有値ソルバー(GQE)と、その後の展開を5本で追う。GQEは変分量子固有値ソルバー(VQE)のように回路内の連続パラメータを最適化するのではなく、演算子プールから演算子を選ぶ列を古典の生成モデルに出力させ、学習可能なパラメータをすべて古典側に置く。原論文(2024年1月投稿、2025年9月改訂)はGPT-2型のデコーダでこれを実装し、窒素分子の多くの結合長でCCSDを上回る精度と、IBM実機での実証を示した。続く4本は、この枠組みを別の方向へ伸ばしている。問題の係数を入力に取るエンコーダ・デコーダ型で組合せ最適化の「解ける生成器」を学習した条件付きGQE、GQEの基底状態を励起状態計算へつないで水のオージェスペクトルを出したワークフロー、回路切断のサンプリングコストに上限を課して生成する制約付きGQE、そしてフィードフォワード層を量子着想のコルモゴロフ・アーノルド網へ置き換えてパラメータを約3分の1にした軽量版である。5本は新着ではなく、2024年1月から2026年5月までの投稿である。共通して見るべきは、比較の相手がどの条件のVQEや古典解法か、量子計算の部分が実機かノイズなしシミュレータか、そして学習と評価に使った古典計算のコストがどこに計上されているかである。

論文1: 生成量子固有値ソルバーによる基底状態探索の提案

出典: The generative quantum eigensolver (GQE) and its application for ground state search. arXiv:2401.09253 (2024, v2 2025).

生成モデルに量子回路そのものを書かせるという枠組みを最初に定式化した論文で、NVIDIAのCUDA-Q Solversに実装が組み込まれるなど、この特集で扱う後続研究の出発点になっているので最初に選んだ。著者は中路紘平氏(トロント大学、産業技術総合研究所、慶應義塾大学量子コンピューティングセンター、NVIDIA)、Alán Aspuru-Guzik氏らトロント大学、NVIDIA、慶應義塾大学、三菱ケミカルなどの17人である。変分量子アルゴリズムは回路に埋め込んだパラメータを最適化するが、問題サイズが大きくなると学習が難しくなることが知られている。著者らはこの枠組みの外に出て、固定した初期状態に作用させる回路Uを、演算子プール{U_j}から選んだ添字列j₁…j_Nとして生成する確率分布p_θ(U)を古典モデルで表し、生成される回路のエネルギーが低くなるようにθを学習する。自然言語との対応で言えば、演算子プールが語彙、演算子が単語、回路が文書にあたる。先行研究には生成モデルでVQEのパラメータを出すものや強化学習で回路構造を作るものがあるが、強化学習では次のゲートを決めるたびに途中の量子状態の情報が要り、ゲート数に応じて測定回数が増える。GQEは完成した回路のエネルギーだけを使い、途中測定を必要としない。

GPT-2を元にした6層・6ヘッドのデコーダ(GPT-QE)が各ステップのロジットwを出し、逆温度βのもとでe^{−βw}に比例する確率で次の演算子を選ぶ。回路全体の生成確率は次のように書ける。

$$ p_N(\beta,\vec j)=\frac{\exp\!\left(-\beta\, w_{\mathrm{sum}}(\vec j)\right)}{\mathcal Z},\qquad w_{\mathrm{sum}}(\vec j)=\sum_{k=1}^{N} w^{(k)}_{j_k} $$

ロジットの和をエネルギーに合わせる「ロジット整合」損失を学習すると、生成される状態は擬似的な熱分布になり、βを上げるほど低エネルギー側に偏る。改訂版では、バッチ内で報酬を標準化するGRPO損失も導入し、窒素分子の結合長1.5Åでの比較ではGRPOが全ゲート数でロジット整合を上回った。演算子プールはUCCSDをトロッター分解したパウリ時間発展に離散的な時間幅を掛け合わせたもので、初期状態はハートリー・フォック状態である。CUDA QuantumとNERSCのPerlmutter上のA100で、sto-3g基底のH₂(4キュービット)、LiH(10キュービット)、BeH₂と窒素分子(各12キュービット)を扱い、回路長はそれぞれ10、40、60、100トークンとした。H₂とLiHでは全結合長で化学的精度1.6mHaに達したが、BeH₂と窒素分子では平衡付近でのみ化学的精度を保ち、解離領域では誤差が増えた。窒素分子では多くの結合長でCCSDより精度が高い。事前学習では、結合長1.2Åで得た7万5千組の(回路列、エネルギー)を、パウリ期待値を再利用する係数の再重み付けで1.05Åのデータに変換し、低エネルギー側10%を混ぜると化学的精度までのエネルギー評価回数が約17%減った。IBMの127キュービット機ibm_kawasakiでは4キュービットを使い、読み出し誤り緩和とゼロノイズ外挿を併用してH₂の解離曲線を学習し、得られた回路の実機エネルギーは同じ回路の状態ベクトル計算と0.002ハートリー以内で一致した。必要なトークン数は結合長0.7Å未満で2、1.2Åで3、2.0Åで6と、電子相関が強まるほど増えた。限界として、最大12キュービットの小分子で、化学的精度に届かない領域が残る。分子構造などを条件入力にして再学習なしで新しい系へ移す汎化は、この論文では方向性として述べるにとどまり、実証されていない。VQEとの直接の精度・コスト比較もこの論文の主題ではない。

論文2: 条件付き生成量子固有値ソルバーによる組合せ最適化

出典: Generative quantum combinatorial optimization by means of a novel conditional generative quantum eigensolver. arXiv:2501.16986 (2025).

原論文が方向性として示すにとどめた「条件入力つきの生成」を初めて具体的に実装し、王立化学会のDigital Discovery誌にも掲載された論文なので選んだ。著者は産業技術総合研究所のShunya Minami氏、Yohichi Suzuki氏、Tadashi Kadowaki氏と、NVIDIAの中路紘平氏、トロント大学のAspuru-Guzik氏である。GPT-QEは問題ごとにモデルを学習し直す必要があり、この点ではVQAと変わらない。本論文の条件付きGQEは、問題の変数xをエンコーダへ入れ、デコーダがp_θ(U|x)から回路を生成する。組合せ最適化問題はイジング・ハミルトニアンに写せるので、その係数をグラフとして表し、トランスフォーマー畳み込みを使うグラフニューラルネットワークでエンコードする。ゲートプールはアダマール、回転ゲート、CNOT、QAOAに由来するR_ZZで、回転角は±π/3、±π/4、±π/5の6通りに限った。UCCSDのような問題に合わせたプールを使わずに学習できるかを見るためである。学習には、回路の期待値を比べて良い回路の生成確率を上げる直接選好最適化(DPO)を使い、正解ラベルも途中の量子状態も要らない。量子ビット数に応じて専門家層を切り替える混合専門家構造と、小さい回路から段階的に進めるカリキュラム学習を組み合わせた。

3〜10キュービットの問題を扱うモデルを学習し、各サイズ1,000問のランダムな問題で、100本サンプルした回路のうち期待値最小のものの最頻ビット列を答えとした。正答率はどのサイズでも約99%で、疑似焼きなまし法とQAOAはサイズとともに下がった。QAOAは3キュービットでも90%に届かず、10キュービットでは約30%だった。90%精度に達するまでの実行時間は、総当たりと疑似焼きなまし法が問題サイズとともに指数的に伸びたのに対し、この手法の伸びは小さく、10キュービットを超えると総当たりより速くなった。ただし量子計算はGPU上のシミュレータで行っており、量子計算による加速はこの結果に含まれない。誤答はサイズ3と4で各1問、サイズ5で2問あり、いずれも2番目の解のコストが最適値に非常に近く、サンプル数を300〜1,600本に増やすと解けた。生成された回路はQAOAの1層回路より浅くCNOTが少ないが、3キュービットの例ではR_Y(π/3)を3回重ねたビット反転が解を決め、残りのゲートは大域位相を変えるだけだった。著者ら自身、このモデルは量子力学的な推論ではなく記憶した事例の補間で回路を作っているように見え、大域位相だけに効くゲートを除くと多くの回路はクリフォード回路になって古典シミュレーション可能だとして、量子優位性は示していないと明記している。IonQ Ariaでの10変数マックスカットでは、この手法の回路は1ショットで正解を出し、2層QAOAは100ショットを超えて必要だった。一方、この問題は二重縮退しているが、この手法は片方の解しか出さず、両方にピークを持つQAOAと対照的だった。学習前に大規模な古典計算が要る点も、残る課題として挙げられている。

論文3: 生成量子固有値ソルバーで計算する水分子のオージェスペクトル

出典: Auger Spectroscopy via Generative Quantum Eigensolver: A Quantum Approach to Molecular Excitations. arXiv:2603.12859 (2026).

GQEを基底状態のエネルギー計算で終わらせず、実験と照合できる分光スペクトルまで通したワークフローで、中路紘平氏とNVIDIA東京の濱村一航氏がともに著者に入っているので選んだ。著者は三菱ケミカル、みずほリサーチ&テクノロジーズ、慶應義塾大学量子コンピューティングセンター、東京大学、産業技術総合研究所、NVIDIA、トロント大学の19人である。オージェ電子分光は内殻の空孔が埋まるときに放出される電子を測る手法で、極端紫外線(EUV)リソグラフィ用のフォトレジストの設計でも内殻励起の緩和経路が問題になる。計算するには、内殻イオン化状態と二重イオン化状態を多数解く必要があり、完全配置間相互作用は約20空間軌道を超えると扱えない。著者らは、GQEで基底状態の回路を作り、量子自己無撞着運動方程式法(q-sc-EOM)で内殻イオン化エネルギー、二重イオン化エネルギー、遷移縮約密度行列を求め、一中心近似でオージェ遷移率を出す三段構成を組んだ。量子回路の評価はすべてCUDA-Qのノイズなし状態ベクトルシミュレータで行った。

STO-3G基底の水分子では、酸素1s内殻を凍結して6価電子軌道・8電子を12キュービットに写し、q-sc-EOMの段階で内殻を戻して14キュービットにする。GQEは深さ60トークンで、GPT-2の学習2,000反復以内に化学的精度に達し、市販のRTX A5000一枚で10時間未満だった。同じ12キュービット条件で1次トロッター化したUCCSDのVQEと比べると、GQEの回路は全ゲート数が2,628から1,082へ58.8%、CNOTが1,504から538へ64.2%減り、エネルギーは1.13mHa高かった。基底状態の回路はその後の多数の期待値評価で繰り返し使われるため、この削減は全体に効く。励起状態側の測定量は合計47,239回の期待値評価で、その92.9%がオージェ遷移密度行列の計算に費やされる。得られたスペクトルは、完全配置間相互作用と一中心近似による古典の参照、および実験スペクトルと主要ピークの数・相対位置・相対強度が一致した。基底状態をVQEに差し替えてもスペクトルはほぼ同一で、古典参照に比べて一部の分裂が見えない点や、2a₁⁻²と2a₁⁻¹3a₁⁻¹の強度が文献値の約2倍になる点は、基底状態ではなくq-sc-EOM近似に由来すると著者らは解釈している。絶対エネルギーには系統的なずれがあり、例えば最強の1b₁⁻²一重項はGQEで505.83eV、実験で499.39eVで、著者らはこの隔たりを約10eVと表現している。限界として、対象は最小基底の水分子1つで、実機では実行していない。GQEを励起状態の回路生成へ直接広げることや分子間の転移学習は今後の課題とされ、40キュービットを超える分子を扱えるという見通しは結論部での展望である。

論文4: 回路切断のオーバーヘッドに上限を課した生成量子固有値ソルバー

出典: Generative quantum eigensolver with constrained circuit-cutting overhead. arXiv:2509.08351 (2025).

生成過程でハードウェア側の制約を満たす回路だけを出させるという、GQEの自己回帰構造を活かした拡張を具体的に示しているので選んだ。著者はPwCコンサルティング合同会社テクノロジーラボラトリーのJunya Nakamura氏とShinichiro Sanji氏である。量子回路切断は、1台の装置の量子ビット数を超える回路を小さな部分回路に分け、準確率分解で元の結果を再構成する技術だが、必要なショット数は切断するゲートの種類と角度によって大きく増える。部分系をまたぐR_ZZ(θ)ゲートの組Cを切る場合のオーバーヘッドは次式で与えられ、精度εに必要なショット数はφ²/ε²に比例する。

$$ \phi = 2\prod_{k\in C}\left(\left|\cos\frac{\theta_k}{2}\right|+\left|\sin\frac{\theta_k}{2}\right|\right)^{2}-1 $$

著者らはこれを対数を取って演算子ごとの加法的なコストu_jに直し、生成の各ステップで残りの許容量を超える演算子のロジットに負の無限大を入れる。棄却サンプリングが要らず、u_jは切断位置が決まれば事前に計算できる。演算子にはPennyLaneの二重励起・一重励起ゲートを使い、二重励起をR_ZZ(±θ/8)八つ、一重励起をR_ZZ(±θ/2)二つに書き直すことで、θ=π/4の二重励起の切断コストをCNOT約1個分の0.37に抑えた。CNOT分解経由なら7個のCNOTを切る必要があり、2.43になる。学習側では、生成時と同じマスクを損失計算にも適用する損失マスキング、DPOの重みσ(−z)が正しく順位づけられた組で消える問題を下限αで補う持続DPO(P-DPO)、エネルギーの高い順に捨てる再利用バッファで過去のサンプルを混ぜるオンライン・オフライン併用学習を提案した。

評価はsto-3g基底、結合長2.1ÅのBeH₂で、14キュービット回路を偶数番と奇数番の7キュービットずつに切る設定である。演算子プールは1,633個で、そのうち1,152個が部分系をまたぐ。12層のGPT-2型デコーダで長さ50の列を生成し、1ステップ10回路、3,000ステップを5つの乱数シードで回した。量子回路はPennyLaneのシミュレータで計算し、ショット雑音もデコヒーレンスも入れていない。上限φ_maxをCNOT 1、2、3個の切断に相当する3、7、15に設定すると、生成回路は常に制約を満たし、無制約ではφが20を超えた。φ_max=15の最小エネルギーは無制約の場合とほとんど変わらない。φ_max=15の条件でP-DPO(α=0.3)はDPOより低いエネルギーに達し、併用学習でさらに改善した。損失マスキングを外すと収束が悪くなり、シード間のばらつきも大きくなった。限界として、到達したエネルギーはPennyLaneデータセットのVQE解に近づくところまでで、厳密解には届いていない。演算子プールがそのVQEと同じアンザッツなので、このプールを使う限りそれが上限かもしれないと著者ら自身が述べている。検証は1分子・1結合長・二分割の理想条件のみで、実機や雑音下での切断は扱っていない。コードは著者への依頼で提供される。

論文5: 量子着想コルモゴロフ・アーノルド網による生成量子固有値ソルバーの軽量化

出典: Generative Quantum-inspired Kolmogorov-Arnold Eigensolver. arXiv:2605.04604 (2026).

GQEの研究がアルゴリズム側から古典の生成器そのものの計算コストへ関心を移しつつあることを示す例で、謝辞にNVIDIA量子チームの中路紘平氏らへの謝意も記されているので選んだ。著者は台湾の国家高速網路與計算中心、陽明交通大学、台湾大学、NVIDIA AIテクノロジーセンター台北、インペリアル・カレッジ・ロンドンなどの12人である。GPT型の生成器では、位置ごとのフィードフォワード層がパラメータの大部分を占め、演算子プールと回路長が伸びるとメモリと学習コストを押し上げる。本論文のGQKAEは、各トランスフォーマーブロックのフィードフォワード層を、低次元の潜在空間へ射影してから量子着想コルモゴロフ・アーノルド網(QKAN)で非線形変換し、元の次元へ戻すHQKANモジュールに置き換える。QKANの各辺の活性化関数は、1量子ビットのデータ再アップロード回路を模したDARUANで、実際の量子計算ではなく古典計算で評価される。回路の評価には期待値ではなく量子選択配置間相互作用(QSCI)を使い、生成回路の測定で得たビット列から最大d_max個の行列式を選んでハミルトニアンを古典的に対角化したエネルギーを報酬とし、GRPOで学習する。

評価はNVIDIA HGX H200上で、H₄(8キュービット)、窒素分子(16)、LiH(20)、エタン(12)、水(16)、水二量体(16)の6系について、結合長、二面角、結合角、分子間距離を走査した。潜在次元は12、1反復10回路、10⁵ショット、100反復、d_max=2000、5試行の平均である。両モデルとも活性空間内のCASCIに対して化学的精度に達し、窒素分子、LiH、水では最終誤差がGQEより小さく、LiHと水では初期の降下も速かった。エタンでは通常のGQEがわずかに低い最小値を見つけた。エタンのねじれ障壁はGQKAEが0.122eV、GQEが0.125eVで、実験値の約0.13eVに近い。窒素分子の1.0〜2.0Åでは両モデルとも試行間のばらつきが大きく広がった。水の平衡構造では、d_maxを2000に固定すると10⁴ショットで、ショットを10⁵に固定するとd_max=100で化学的精度に届き、この挙動は両モデルでほぼ同じだった。状態準備回路は、水でGQKAEが全2,334ゲート・2量子ビットゲート748個、GQEが2,285・737個で、コンパイルしていないUCCSD-VQEの81,032・36,480個より桁違いに少ない。ただしこの比較の相手は最適化していないUCCSDで、ADAPT-VQEのような適応型の手法とは比べていないと著者らが明記している。古典側では、本文によればパラメータが約42.7Mから14.5Mへ約66%減り、実行時間は6.8〜16.7%短縮した。ただし同じ表の中で、4つの分子の行ではGQEのパラメータが約55Mと記されている一方、水の2行ではパラメータとメモリの値が入れ替わったように見え、基準値の記載がそろっていない。量子計算はすべてシミュレータで、実機での検証は今後の課題とされている。回路長Lは系ごとに手で決めており、評価がQSCIの古典対角化に依存するため、原論文の期待値ベースのGQEとは評価の仕組みそのものが異なる点にも注意が要る。

参考ソース

  • 論文1: The generative quantum eigensolver (GQE) and its application for ground state search. arXiv:2401.09253
  • 論文2: Generative quantum combinatorial optimization by means of a novel conditional generative quantum eigensolver. arXiv:2501.16986
  • 論文3: Auger Spectroscopy via Generative Quantum Eigensolver: A Quantum Approach to Molecular Excitations. arXiv:2603.12859
  • 論文4: Generative quantum eigensolver with constrained circuit-cutting overhead. arXiv:2509.08351
  • 論文5: Generative Quantum-inspired Kolmogorov-Arnold Eigensolver. arXiv:2605.04604

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