ロックとブルースに出会ったセビリアのフラメンコ ライムンド・アマドール、アントニオ・カナレス、ロレ・モントーヤ、フォンティベロス、マリアーナ【2026/11/02】

2026-11-02 / スペイン便り


概要

死者の日「ディア・デ・ロス・ディフントス」の11月2日、ロックとブルースに出会ったセビリアのフラメンコをたどる回です。ギタリスト列伝は、弟ラファエルと組んだパタ・ネグラで「ブルースレリア」を鳴らし、カマロンの『時の伝説』に参加し、B.B.キングとも共演したライムンド・アマドール。2026年2月に弟を亡くし、その追悼ツアー「De Pata Negra a Raimundo」を続けています。バイレ列伝は、闘牛士を踊った『Torero』を700回以上上演したアントニオ・カナレス。カンテ列伝は、1975年の『Nuevo día』から50年、いまも「Todo es de color」を歌うロレ・モントーヤ。工房だよりは、400件以上の修復を手がけたセビリア県コンスタンティナ生まれの製作家マキシミアーノ・フォンティベロス、パロ解説は山羊の名を持つとされるゆっくりした4拍子の歌「マリアーナ」です。今日のスペイン語は「ノ・アイ・マル・ケ・ポル・ビエン・ノ・ベンガ(No hay mal que por bien no venga)」。

▼ 今日のトピック ・西サハラの国連監視団ミヌルソ、米ロの拒否権で35年の歴史に幕 ・ウルダ列車事故、レンフェが独自の安全手順/総選挙まで4週間 ・彫刻家ミケル・ナバロ死去(81歳)/アルモドバルが初の小説 ・「ヌエボ・フラメンコ」から25年/ヘレスのフラメンコ博物館、開館は早くても2029年/フアン・マルチ財団「フラメンコの地図」 ・ギター列伝: ライムンド・アマドール(Raimundo Amador) ・バイレ列伝: アントニオ・カナレス(Antonio Canales) ・カンテ列伝: ロレ・モントーヤ(Lole Montoya) ・工房だより: マキシミアーノ・フォンティベロス(Maximiano Fontiveros、セビリア県コンスタンティナ生まれ) ・パロ解説: マリアーナ(Marianas)

▼ 関連リンク(アーティスト・パロ・工房) ・パタ・ネグラ『Blues de la Frontera』(Nuevos Medios公式) https://www.youtube.com/watch?v=wcqOWWG3x6Y ・ライムンド・アマドール『Gerundina』(公式配信) https://www.youtube.com/watch?v=3Zfg-UVoF-4 ・ライムンド・アマドール『Bolleré』(公式配信) https://www.youtube.com/watch?v=uVZeBwF6GsI ・ライムンド・アマドール『Bolleré (En Directo)』60 aniversario(公式配信) https://www.youtube.com/watch?v=KUU-Rt6i4-g ・マヌエル・モリーナとライムンド・アマドール『Bulerías』2006年(アンダルシア・フラメンコ放送公式) https://www.youtube.com/watch?v=tj1rzzp1ArI ・アントニオ・カナレス『Soleá por Bulerías』1993年(アンダルシア・フラメンコ放送公式) https://www.youtube.com/watch?v=HUETwgsfIKY ・アントニオ・カナレス『Torero』DVD予告(舞踊団公式) https://www.youtube.com/watch?v=sAhRLoZmN0M ・ロレ・イ・マヌエル『Todo es de color』1990年(アンダルシア・フラメンコ放送公式) https://www.youtube.com/watch?v=aWDmrKOulRo ・マキシミアーノ・フォンティベロス2005年製の試奏(ソレラ・フラメンカ公式) https://www.youtube.com/watch?v=ShBzoa3FpV4 ・ベルナルド・エル・デ・ロス・ロビートス&ペリコ・エル・デル・ルナール『Marianas』(公式配信) https://www.youtube.com/watch?v=YXV6G1XXC6Q ・ラウラ・ビタル『Marianas』2017年(アンダルシア・フラメンコ放送公式) https://www.youtube.com/watch?v=YLFeIrcysJM ・ディエゴ・クラベル『Mariana』2000年(アンダルシア・フラメンコ放送公式) https://www.youtube.com/watch?v=aJkku5y81dU ・アルヘンティーナ『Mariana y Tangos』2015年(アンダルシア・フラメンコ放送公式) https://www.youtube.com/watch?v=bJmzcxcXuHQ ・パストーラ・ガルバン『Mariana』2011年(アンダルシア・フラメンコ放送公式) https://www.youtube.com/watch?v=D_hFTuSBpvo

▼ 参考記事・ソース ・El País「La ONU ordena desmantelar la misión en el Sáhara mientras se dispara el riesgo de escalada bélica」 https://elpais.com/internacional/2026-11-01/la-mision-de-la-onu-en-el-sahara-queda-en-el-limbo-mientras-se-dispara-el-riesgo-de-escalada-belica.html ・El Mundo「Renfe se suma a la desconfianza sobre las normas de seguridad de Adif」 https://www.elmundo.es/economia/2026/11/01/6ae73056e9cf4a74618b4595.html ・El País「Muere Miquel Navarro a los 81 años」 https://elpais.com/cultura/2026-11-01/muere-a-los-81-anos-el-artista-miquel-navarro.html ・El Mundo「Pedro Almodóvar: “No soy nada narcisista…“」 https://www.elmundo.es/la-lectura/2026/11/01/6adb5894fc6c8344068b4598.html ・ExpoFlamenco「El Nuevo Flamenco cumple 25 años… ¡Y está vivo!」 https://expoflamenco.world/revista/el-nuevo-flamenco-cumple-25-anos-y-esta-vivo/ ・ExpoFlamenco「Cartografías del flamenco」 https://expoflamenco.world/revista/jesus-mendez-y-joni-jimenez-abren-cartografias-del-flamenco-con-los-cantes-de-cadiz-jerez-y-los-puertos/ ・La Ganzúa「De Pata Negra a Raimundo 2026」 https://www.laganzua.net/noticias/31748-raimundo-amador-anuncia-la-gira-de-pata-negra-a-raimundo-2026-con-conciertos-en-madrid-toledo-o-granada ・ExpoFlamenco「Lole Montoya y los cincuenta años de Nuevo día」 https://expoflamenco.world/revista/lole-montoya-y-los-cincuenta-anos-de-nuevo-dia-en-torres-macarena/ ・Instituto Andaluz del Flamenco「Marianas」 https://www.juntadeandalucia.es/cultura/flamenco/content/marianas

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スペイン文化・フラメンコ便り(2026年11月2日)

オープニング:2026年11月2日 — スペイン文化・フラメンコ便り

  • 今日のスペイン語は「ノ・アイ・マル・ケ・ポル・ビエン・ノ・ベンガ(No hay mal que por bien no venga)」。直訳は「良いことを連れてこない悪いことはない」。災いの中にも何かしら得るものがある、という慰めのことわざで、日本語の「災い転じて福となす」に近い。
  • 11月2日はスペインの「ディア・デ・ロス・ディフントス(Día de los Difuntos、死者の日)」。前日の万聖節に続いて、亡くなった家族をしのぶ日である。
  • 今日の軸は「ロックとブルースに出会ったセビリアのフラメンコ」。2026年2月に弟ラファエルを亡くし、その追悼を込めた全国ツアー「デ・パタ・ネグラ・ア・ライムンド」を続けるギタリスト、ライムンド・アマドール。1975年の『Nuevo día』で同じ時代のセビリアからフラメンコを塗り替えた歌い手ロレ・モントーヤ。同じセビリア生まれで舞台作品『Torero』を700回以上上演した踊り手アントニオ・カナレス。ライムンドも弾いたとされるセビリア県コンスタンティナ生まれの製作家マキシミアーノ・フォンティベロス。パロ解説は、セビリア生まれとされるゆっくりした4拍子の歌「マリアーナ(Marianas)」。

国際情勢(スペイン視点)

  • 西サハラの国連ミッション、35年で幕: エル・パイス紙(11月1日)によると、1991年に住民投票を実施するために設けられた国連西サハラ住民投票監視団(ミヌルソ)が、10月31日深夜に最後の任期を終えて消滅し、国連は11月1日に撤収を命じた。10月30日の安全保障理事会で、米国が出した更新決議は11票の賛成と3票の棄権を得たが、米国とロシアが互いに拒否権を行使し合った。西サハラは旧スペイン植民地で、モロッコが領域の約8割を実効支配し、独立を求めるポリサリオ戦線との停戦は2020年に崩れている。グテーレス事務総長は「敵対行為が激化するおそれ」を警告した。スペインにとっては、南の玄関口カナリア諸島の目の前で起きている旧植民地の問題である。

スペイン国内ニュース

  • ウルダ列車事故、レンフェが独自の安全手順: エル・ムンド紙(11月1日)によると、69人が死亡したトレド県ウルダの事故を受け、国営鉄道会社レンフェは、信号保安装置LZBが止まったときに線路を管理するアディフの管制室から運転士へ出される指示に対して、自社独自の安全手順を11月1日から適用した。エル・パイス紙(11月1日)のインタビューで、運転士組合SEMAFのディエゴ・マルティン書記長は「働く者は鉄道システムを信頼していない」と述べ、信号が止まったときは速度を最低にするよう国の鉄道安全庁に求めた。
  • 総選挙まで4週間: エル・ムンド紙(11月1日)は、事故が政権与党の社会労働党(PSOE)に重くのしかかり、党内から「どうやって票を頼めばいいのか」という声が出ていると伝えた。

文化・芸能ニュース

  • 彫刻家ミケル・ナバロ死去、81歳: エル・パイス紙・エル・ムンド紙(11月1日)によると、塔や建物の形を並べて「トーテムの都市」をつくった彫刻家ミケル・ナバロが81歳で亡くなった。1986年に国民造形芸術賞を受けた「新しいスペイン彫刻」の代表格で、最後の夢だった故郷バレンシア県ミスラタの「カサ・タジェール(家と工房)」を開いたうえでの旅立ちだった。
  • アルモドバル、小説家デビュー: エル・ムンド紙の書評誌『ラ・レクトゥーラ』(11月1日)によると、映画監督ペドロ・アルモドバルが初の小説『El hombre que solo escribía en los aviones(飛行機の中でしか書かなかった男)』をレゼルボワール・ブックスから出した。インタビューで本人は「私はまったくナルシストではない。何週間も鏡を見ずに過ごせる」と語っている。

フラメンコニュース

  • 「ヌエボ・フラメンコ」から25年: エクスポフラメンコ(10月30日、アレハンドロ・ルケ記者)は、1990年代末にケタマ、ナバヒータ・プラテア、ホセ・エル・フランセス、エル・バリオ、マイタ・ベンデ・カ、バルベリア・デル・スールらがまとめて呼ばれた「新しいフラメンコ」のヒットから25年を振り返った。ホセ・エル・フランセスの『Las calles de San Blas』は1999年の再発で80万枚を売った。その源流としてパタ・ネグラの『Blues de la frontera』にも触れている。下火の理由について、バルベリア・デル・スールのエンリケ・エレディア「エル・ネグリ」は海賊版とテレビ番組を挙げた。
  • ヘレスの「アンダルシア・フラメンコ博物館」、開館は早くても2029年: ディアリオ・デ・ヘレス紙(11月1日)は、費用が膨らみ、開館が少なくとも2029年にずれ込むと伝えた。ベレン広場近くの旧市街で2022年1月に着工し、ヨーロッパの基金を中心に最大680万ユーロ、工期は約2年の計画だったが、2024年4月に工事が止まり、州政府は施工会社との契約を解除した。2026年8月31日に、市が仕上げ工事の計画変更の許可を出している。
  • マドリードで「フラメンコの地図」: エクスポフラメンコ(10月30日)によると、マドリードのフアン・マルチ財団が、2027年5月28日まで7回の連続公演「Cartografías del flamenco(フラメンコの地図)」を始めた。初回は10月30日、「ゆりかご:カディス、ヘレスと港町」と題し、歌のヘスス・メンデス(10月19日のカンテ列伝)、ギターのホニ・ヒメネス、解説のファウスティーノ・ヌニェスで、マルティネーテからファンダンゴまで19世紀のカディス周辺の歌をたどった。次回は「本質:セビリアとコルドバ」。アンダルシアの産地を、首都の財団が順に地図にしていく形である。

フラメンコギタリスト列伝

  • 今日の一人: ライムンド・アマドール(Raimundo Amador、本名ライムンド・アマドール・フェルナンデス)。1959年5月26日、セビリア生まれのヒターノのギタリスト、歌い手。フラメンコにブルースとロックを持ち込み、弟ラファエルと組んだパタ・ネグラの音は、「ブレリア」をもじって「ブルースレリア」と呼ばれた。
  • 生い立ち: 伝記サイトによると、7人のきょうだいがいて、皆が、のちに1992年の万博会場となったセビリアのチャピナ地区のバラックで生まれた。長く「ラス・トレス・ミル・ビビエンダス(3000戸団地)」で暮らした。父はカディス県ロタの米軍基地でギターを弾いて働き、最初のギターも父がその基地で買ってきた、西部劇の牛飼いの絵が白く描かれた赤い張り子のギターだった。12歳でセビリアの街角に立ち、小銭と、家へ帰るタクシー代のために弾いた。2011年のインタビューで「父のようになるつもりだった」「学校にはあまり行かなかった。音楽のために生まれてきた」と語っている。
  • 転機1(タブラオの伴奏者): タブラオでフェルナンダ・デ・ウトレラの伴奏から始め、タブラオ「ロス・ヒタニージョス」でカマロン・デ・ラ・イスラとパコ・デ・ルシアに出会った。
  • 転機2(ベネノとカマロン、1977〜79年): 1977年、キコ・ベネノ、弟ラファエルと3人組「ベネノ」を結成し、ドラム、ベース、エレキギターでフラメンコを鳴らした。バンドは短命だったが、3人は1979年のカマロン『La leyenda del tiempo(時の伝説)』の録音に加わった。ベネノ、カマロンの同作、ロレ・イ・マヌエルを世に送ったのが、8月23日にお伝えしたプロデューサーのリカルド・パチョンである。
  • 転機3(パタ・ネグラ、1981〜89年): 弟と組んだパタ・ネグラで、『Pata Negra』(1981年)、『Rock gitano』(1982年)、『Guitarras callejeras』(1985年)、『Blues de la frontera』(1987年。1986年とする資料もある)を出した。最後の共演は1989年、バルセロナのサラ・セレステでのライブ。兄弟の不和でライムンドが抜け、名前はラファエルが引き継いだ。
  • 転機4(ソロとB.B.キング): 1992年に元グアダルキビルのルイス・コボ「エル・マングリス」と組んだアラハタブラで『Sevilla blues』、1995年に初のソロ盤『Gerundina』を出した。B.B.キングとアンドレス・カラマロが参加し、キャシー・クラレの曲『Bolleré』がヒットした。1998年7月22日にはマドリードのラス・ベンタス闘牛場でB.B.キングと共演し、その夜はライブ盤『Noche de flamenco y blues』になった。2004年にはB.B.キングのスペイン・ツアーにも同行した。1997年にはビョークの『So Broken』でスペイン・ギターを弾いている。
  • 代表作1(兄弟の時代): ヌエボス・メディオス公式の『Pata Negra - Blues de la Frontera』。アルバム表題曲で、エクスポフラメンコの「ヌエボ・フラメンコ25年」の記事も源流として名を挙げた。ブレリアの弾むリズムの上で、ブルースの泣くようなフレーズがどう同居するかを聴きたい。曲は約4分。
  • 代表作2(名前を持つギター): 公式配信の『Gerundina』(作詞作曲カルロス・レンセロとライムンド・アマドール、約3分半)。1995年の初ソロ盤の表題曲である。伝記サイトは、このアルバムを、アルメリアの製作家ヘルンディーノ・フェルナンデスが作った彼のギターに捧げたものと紹介している。ギター自身が主役の曲として、歌の合間の短いフレーズの音色に注目したい。
  • 代表作3(初ソロ盤のヒット曲): 公式配信の『Bolleré』(作詞作曲C・クラレ、L・J・イブ・ピエールとライムンド・アマドール)。『Gerundina』で広く知られた曲である。2020年の『60 aniversario(60周年)』に入った『Bolleré (En Directo)』と聴き比べると、25年後の自宅での録音で、同じ曲の運びがどう変わったかが分かる。
  • 代表作4(フラメンコの顔): アンダルシア・フラメンコ放送公式の『Bulerías. Manuel Molina y Raimundo Amador. 2006』。番組『Las Mil y Una Noches』で、歌とギターはロレ・イ・マヌエルのマヌエル・モリーナ、もう一本のギターがライムンド。エレキを置いた2人のギターが、ブレリアの拍をどう分け合うかに注目したい。今日のカンテ列伝へもつながる映像である。
  • 技法と比較: 2011年のインタビューで本人は「ブルースの中でアラブとフラメンコの音階を使う」と説明し、「私はカメレオンだ」「自分には、人間の部分よりギターの部分のほうが多い」と語った。パコ・デ・ルシアが和声と速さでフラメンコ・ギターの内側を押し広げたのに対し、ライムンドはエレキギターとブルースという外の言葉をフラメンコの拍に乗せた。2010年のアルバム名『Medio hombre medio guitarra(半分人間、半分ギター)』はその言葉どおりである。
  • 使用ギター: スペイン語版ウィキペディアによると、フラメンコ用とエレキを合わせて10本以上のギターを持ち、すべてに女性の名前をつけている。『Gerundina』はその一本の名で、2019年には聖週間で知られるセビリアの「グラン・ポデールのキリスト」にちなむ「ポデローサ」が加わった。ギター店の紹介では、ヘルンディーノ・フェルナンデス(9月4〜5日の工房だより)と、今日の工房だよりのマキシミアーノ・フォンティベロスの楽器を弾いた奏者として名前が挙がっている。
  • いま: 2026年2月8日、弟ラファエルがセビリアのビルヘン・デル・ロシオ病院で65歳で亡くなった。ライムンドはその追悼として、5月から約20都市を回るツアー「De Pata Negra a Raimundo 2026」を始め、マドリードのグラン・ビア劇場(5月13日)などで演奏した。11月27日にはアリカンテ県サン・ビセンテ・デル・ラスペイグ、12月5日にはバレンシアのロイグ・アレナでの公演が予定されている。
  • 今から聴くなら: まずパタ・ネグラの『Blues de la frontera』で兄弟の「ブルースレリア」を、次にマヌエル・モリーナとの2006年のブレリアでアコースティックの顔を聴くと、同じ人がフラメンコの拍の内と外を行き来していることが分かる。本人は「私はレコードで食べてきたのではない。ステージで食べてきた」と語っている。

フラメンコバイレ列伝

  • 今日の一人: アントニオ・カナレス(Antonio Canales、本名アントニオ・ゴメス・デ・ロス・レジェス)。1961年12月3日、セビリアのス・エミネンシア地区生まれの踊り手、振付家。
  • 歩み: スペイン国立バレエ団でソリストになり、パリのマギー・マラン舞踊団でも踊った。1992年に自分の舞踊団を作り、ビルバオで『A ti Carmen Amaya(カルメン・アマヤへ)』などを初演。1993年の『Torero』はカナダで初演され、翌1994年にスペインで上演されて国内で700回を超えた。1995年に国民舞踊賞を受け、スペイン国営テレビが収録した『Torero』はエミー賞の候補になった。2020年には芸術功労金章を受けている。10月10日のバイレ列伝のラ・チャナを「わが師」と呼んだ人でもある。
  • 見どころ1: アンダルシア・フラメンコ放送公式の『Soleá por Bulerías. Antonio Canales. 1993』。『Torero』と同じ1993年、セビリアのテアトロ・セントラルで開かれた「ガラ・デ・アンダルシア」の記録である。重心の低い構えから床を打つサパテアードと、決めの一瞬で体を止める間合いに注目したい。
  • 見どころ2: アントニオ・カナレス舞踊団公式の『Trailer del DVD TORERO de Antonio Canales』。1994年にスペイン国営テレビが制作した『Torero』の再発DVDの予告で、歌はマリア・カルモナとフアン・カラスコ、ギターはホセ、ラモン、ダビのヒメネス3人。闘牛士の動きを踊りに移した群舞の構成が見どころ。
  • いま: 2024年9月、62歳で「2025年の公演を最後にする」と発表した。舞台に立って40年を超えていた。

フラメンコカンテ列伝

  • 今日の一人: ロレ・モントーヤ(Lole Montoya、本名ドローレス・モントーヤ・ロドリゲス)。1954年4月26日、セビリア生まれ。トリアナのヒターノの家に育ち、父は踊り手フアン・モントーヤ、母はアラビア語でも歌った歌い手・踊り手のアントニア「ラ・ネグラ」。
  • 歩み: 最初は踊り手として、マドリードのタブラオ「ラス・ブルハス」やセビリアの「ロス・ガジョス」に出て、ラ・ペルラ・デ・カディスやカマロンと同じ舞台に立った。1972年、ギタリストのマヌエル・モリーナと二人組「ロレ・イ・マヌエル」を組み、20年以上続けた。1975年の第1作『Nuevo día(新しい日)』は、リカルド・パチョンの制作、詩人フアン・マヌエル・フローレスの詞で、エレキギター、ベース、ドラム、鍵盤、バイオリン、チェロを使い、平和、愛、自由、自然、太陽と月を歌った。マヌエル本人は、最大の新しさは「ゆっくりにしたブレリアで日々の暮らしを語ったこと」だと話している。1978年に娘のアルバ・モリーナ(歌い手)が生まれた。ソロでは『Liberado』(1996年)、『Metáfora』(2008年)などがあり、ライムンド・アマドールとは曲を共作している。2022年に芸術功労金章を受けた。
  • 聴きどころ: アンダルシア・フラメンコ放送公式の『Bulerías. Todo es de color. Lole y Manuel. 1990』。『Nuevo día』の1曲で、1990年の番組『La Puerta del Cante』のアンテケラ特集での演奏。ギターはマヌエル・モリーナ。急がないブレリアの拍の上で、声がどこで伸び、どこで言葉を置くかを聴いてほしい。
  • いま: 2025年11月6日、セビリアのペーニャ「トーレス・マカレナ」で『Nuevo día』の50周年を祝うリサイタルを開き、「トド・エス・デ・コロール」などを歌った。評者は「催眠をかけるような声のビロード」と書いた。12月14日にはマドリードのピラール・ミロ文化センターでも50周年の公演を行い、敬愛する音楽家たちへの思いを込めた新作『Cancionero』に取り組んでいる。

フラメンコギター工房だより

  • 今日の製作家: マキシミアーノ・フォンティベロス(Maximiano Fontiveros)。セビリア県コンスタンティナ出身の製作家・修復家。
  • 経歴: ギター販売店ソレラ・フラメンカの紹介によると、1957年、セビリア県北部の山あいの町コンスタンティナ生まれ。歴史的に価値の高い楽器の修復を400件以上手がけ、同店は「世界でも最高の修復家の一人」と評している。自作のギターは、クラシックとフラメンコを合わせて500本近く。
  • 修復の例: 修復を記録した映像の説明によると、1862年にカディスでフランシスコ・ボニチが作ったスペイン・ギターを、2013年に修復した。
  • 弾き手: 同店は、ラファエル・リケーニ(9月12日・26日のギタリスト列伝)、ライムンド・アマドール、ホセ・ルイス・ポスティゴ、カマロン・デ・ラ・イスラを、彼のギターを弾いた奏者として挙げている。
  • 試奏映像: ソレラ・フラメンカ公式の『Maximiano Fontiveros 2005 flamenco guitar』。ギタリストのペドロ・ハビエル・ゴンサレスが2005年製を弾く。修復で古い名器の内部を見てきた人の新作が、どんな乾いた響きを持つかを聴きたい。

フラメンコのパロ解説

  • 今日のパロ: マリアーナ(Marianas、単数形はマリアーナ)。アンダルシア州フラメンコ研究所はセビリア生まれの歌とし、タンゴの仲間でありながら、ティエントのようにゆっくり歌われると説明している。タンゴ(9月14日)、ティエント(9月18日)の親戚にあたる。
  • 起源と歴史(諸説): 同研究所は、複数のフラメンコ研究者の説として、ヒターノたちが「マリアーナ」という名の山羊に歌いかけた歌が起こりだと紹介する。コルドバのタブラオの解説は、猿や山羊や熊など芸を仕込んだ動物を拍子に合わせて踊らせた旅芸人の歌を、ヒターノがフラメンコに取り込んだと伝える。舞踊教師ホセ・オテロの1912年の『舞踊論』は、マリアーナを「20世紀の初めに流行した、新しい受け入れられた踊り」と書き、踊りに仕立てたのは師匠セグーロ、最初の踊り手はラ・アルヘンティニータだとした。歌い手では「エル・ニーニョ・デ・ラス・マリアーナス」(ルイス・ロペス、1889年セビリア生〜1963年マドリード没)が世に出し、ラ・ニーニャ・デ・ロス・ペイネスがヒターノの色を与えたとされる。1916〜17年ごろにはアントニア・マルティネス「ラ・サレリート」がコロンビア社に録音している。一方で、民謡がフラメンコ化した歌(カンテ・フォルクロリコ・アフラメンカード)に分類する教材もある。
  • 途絶えかけた歌をつないだ人: アルカラ・デ・グアダイラ生まれのベルナルド・エル・デ・ロス・ロビートス(1887〜1969年)。エクスポフラメンコは、彼の持ち歌にマリアーナや脱穀の歌(トリージャ)など「ほとんど消えかけた形」があったと書く。1950年代の『アントロヒア・デル・カンテ・フラメンコ』に、ペリコ・エル・デル・ルナールのギターで録音を残した。
  • コンパスを数える: タンゴと同じ4拍子(2小節で8拍のまとまり)を、ティエントのようにゆっくり刻む。教則の数え方では「1、2、3、4」と1拍目と3拍目を強く数え、パルマは「1と2と3と4と」の裏にも細かく入る。タンゴへ移ると同じ数え方のまま速くなる。
  • 調性とコード進行: 同研究所によれば伴奏は「ポル・アリーバ」、つまりギターのEの形で弾くフリジア旋法(ミの旋法)で、Am→G→F→Eと下りてEで落ち着くアンダルシア終止が骨組みになる。歌い手の声に合わせてカポタストで高さを移す。同じタンゴ系でも、ティエントはAの形(ポル・メディオ)で、B♭とAを行き来して重く沈むことが多い。
  • レトラの形式とテーマ: タンゴ系の歌詞は8音節の3〜4行が基本で、行の繰り返しや入れ替えが多い。マリアーナでは「マリアーナ」の名が歌詞に出てくる。旅のヒターノと動物の暮らしが背景にあり、ラ・プエブラ・デ・カサージャの詩人フランシスコ・モレノ・ガルバンが書いた歌詞を、歌い手ミゲル・バルガスが初めて公の場で歌い、今では広く歌われている。
  • 踊りの構成とバイレ・ギターの聴きどころ: 歌はゆっくりした4拍子で嘆くように伸ばし、最後に速いタンゴへ移って締めることが多い。ギターは、歌の切れ目にEのフリジアの音で合いの手を入れ、拍を急がせずに支える。踊りは、10月17日のバイレ列伝で紹介したパストーラ・ガルバンの『Mariana. Pastora Galván. 2011』(アンダルシア・フラメンコ放送公式、番組『El Sol, la Sal, el Son』)で、ゆっくりした拍の中での腕の運びとサパテアードの入り方が見られる。
  • 代表録音1(古い形): 公式配信の『Marianas (2015 Remastered Version)』。ペリコ・エル・デル・ルナールのギターとベルナルド・エル・デ・ロス・ロビートスの歌で、『アントロヒア・デル・カンテ・フラメンコ』に入った録音(権利表記は1960年イスパボックス)。消えかけた歌を記録した一本として、ゆっくりした4拍子の歌の伸ばし方を聴きたい。
  • 代表録音2(現代の歌い手): アンダルシア・フラメンコ放送公式の『Marianas. Laura Vital. 2017』。番組『Foro Flamenco』で、歌はラウラ・ビタル、ギターはエドゥアルド・レボジャール。同じ公式の『Mariana. Diego Clavel. 2000』(番組『La Venta del Duende』)では、歌がディエゴ・クラベル、ギターが今日の工房だよりにも名前の出たホセ・ルイス・ポスティゴ。女性と男性の声で、同じEのフリジアの響きの中の節回しの違いを聴き比べたい。
  • 代表録音3(タンゴへの移り方): 同じ公式の『Mariana y Tangos. Argentina. 2015』。10月27日のカンテ列伝のアルヘンティーナが、ギターのフアン・ホセ・アルバとハビエル・イバニェスと歌う。ゆっくりしたマリアーナから速いタンゴへ移るところで、パルマの刻みが同じ4拍子のまま速くなるのに注目したい。
  • 似たパロとの聴き分け方: ティエントとはゆっくりした4拍子を共有するが、ティエントはAの形で重く沈み、マリアーナはEの形で弾かれる。タンゴは同じ数え方で速く、踊りやすい。現代では、踊り手ルス・アルカスが2022年のセビリア・ビエナルで舞台『Mariana』を発表し、2024年のマドリード・エン・ダンサでは、田舎の男たちが雌の家畜を守り、頼り、ときに虐げる関係を、原始的なマリアーナの歌とともに描いた。

まとめ

  • 2026年11月2日、死者の日に、ロックとブルースに出会ったセビリアのフラメンコをたどった。弟を見送り、その名を掲げて全国を回るライムンド・アマドール。1975年の『Nuevo día』から50年、いまも「トド・エス・デ・コロール」を歌うロレ・モントーヤ。『Torero』で闘牛士を踊ったアントニオ・カナレス。古い名器を直す手で新作を作るマキシミアーノ・フォンティベロス。そして山羊の名を持つ歌マリアーナ。どれもセビリアに根を持ちながら、外の音を恐れなかった人たちである。

参考ソース

  • 国際: El País「La ONU ordena desmantelar la misión en el Sáhara mientras se dispara el riesgo de escalada bélica」(2026年11月1日) https://elpais.com/internacional/2026-11-01/la-mision-de-la-onu-en-el-sahara-queda-en-el-limbo-mientras-se-dispara-el-riesgo-de-escalada-belica.html
  • 国内: El Mundo「Renfe se suma a la desconfianza sobre las normas de seguridad de Adif y aplica desde hoy un nuevo protocolo a sus maquinistas」(2026年11月1日) https://www.elmundo.es/economia/2026/11/01/6ae73056e9cf4a74618b4595.html
  • 国内: El País「Diego Martín, jefe sindical de los maquinistas: “Los trabajadores no confiamos en el sistema ferroviario”」(2026年11月1日) https://elpais.com/espana/2026-11-01/diego-martin-jefe-sindical-de-los-maquinistas-los-trabajadores-no-confiamos-en-el-sistema-ferroviario.html
  • 国内: El Mundo「Pánico en el PSOE ante una derrota "dura" por los trenes」(2026年11月1日) https://www.elmundo.es/elecciones/elecciones-generales/2026/11/01/6ae63d0021efa0d54c8b45be.html
  • 文化: El País「Muere Miquel Navarro a los 81 años, el gran escultor de las ciudades totémicas」(2026年11月1日) https://elpais.com/cultura/2026-11-01/muere-a-los-81-anos-el-artista-miquel-navarro.html
  • 文化: El Mundo「Pedro Almodóvar: "No soy nada narcisista..."」(2026年11月1日) https://www.elmundo.es/la-lectura/2026/11/01/6adb5894fc6c8344068b4598.html
  • フラメンコ: ExpoFlamenco「El Nuevo Flamenco cumple 25 años… ¡Y está vivo!」(2026年10月30日) https://expoflamenco.world/revista/el-nuevo-flamenco-cumple-25-anos-y-esta-vivo/
  • フラメンコ: Diario de Jerez「El Museo de Flamenco no abrirá hasta, al menos, 2029 y se eleva su coste」(2026年11月1日、Google News経由)/Diario Bahía de Cádiz「La Junta buscará otra empresa para culminar la obra del Museo del Flamenco en Jerez」(2024年6月3日) https://diariobahiadecadiz.com/jerez/la-junta-buscara-otra-empresa-para-culminar-la-obra-del-museo-del-flamenco-en-jerez
  • フラメンコ: ExpoFlamenco「Jesús Méndez y Joni Jiménez abren Cartografías del flamenco」(2026年10月30日) https://expoflamenco.world/revista/jesus-mendez-y-joni-jimenez-abren-cartografias-del-flamenco-con-los-cantes-de-cadiz-jerez-y-los-puertos/
  • ギター列伝: Wikipedia「Raimundo Amador」 https://es.wikipedia.org/wiki/Raimundo_Amador
  • ギター列伝: Buscabiografías「Raimundo Amador」 https://www.buscabiografias.com/biografia/verDetalle/2649/Raimundo%20Amador
  • ギター列伝: El Faro de Ceuta「"En mis discos no hay dos temas que suenen igual. Yo soy un camaleón"」(2011年11月15日) https://elfarodeceuta.es/en-mis-discos-no-hay-dos-temas-que-suenen-igual-yo-soy-un-camaleon/
  • ギター列伝: Diario de León「Rafael Amador, alma de Pata Negra, muere a los 65 años」(2026年2月9日) https://www.diariodeleon.es/sociedad/gente/260209/2075081/rafael-amador-alma-pata-negra-muere-65-anos.html
  • ギター列伝: La Ganzúa「Raimundo Amador anuncia la gira "De Pata Negra a Raimundo 2026"」(2026年2月20日) https://www.laganzua.net/noticias/31748-raimundo-amador-anuncia-la-gira-de-pata-negra-a-raimundo-2026-con-conciertos-en-madrid-toledo-o-granada
  • ギター列伝: Wikipedia「Pata Negra」 https://en.wikipedia.org/wiki/Pata_Negra
  • バイレ列伝: Wikipedia「Antonio Canales (bailaor)」 https://es.wikipedia.org/wiki/Antonio_Canales_(bailaor)
  • カンテ列伝: Wikipedia「Lole Montoya」 https://es.wikipedia.org/wiki/Lole_Montoya
  • カンテ列伝: ExpoFlamenco「Lole Montoya y los cincuenta años de Nuevo día en Torres Macarena」(2025年11月9日) https://expoflamenco.world/revista/lole-montoya-y-los-cincuenta-anos-de-nuevo-dia-en-torres-macarena/
  • 工房だより: Solera Flamenca「Maximiano Fontiveros」 https://www.flamencoguitarsforsale.net/en/?p=7525
  • 工房だより: 修復記録映像「Restauración Guitarra siglo XIX de F.Bonichi por M. Fontiveros」 https://www.youtube.com/watch?v=6_n_sRcwpv4
  • パロ解説: Instituto Andaluz del Flamenco「Marianas」 https://www.juntadeandalucia.es/cultura/flamenco/content/marianas
  • パロ解説: Tablao Cordobés「Marianas」 https://tablaocordobes.es/?p=5167
  • パロ解説: ExpoFlamenco「Bernardo el de los Lobitos, innovative maestro」 https://expoflamenco.com/archivo/en/estela-flamenca/bernardo-el-de-los-lobitos-innovative-maestro/
  • パロ解説: Wikipedia「Tango (flamenco)」 https://en.wikipedia.org/wiki/Tango_(flamenco)
  • パロ解説: Comunidad de Madrid「Luz Arcas | La Phármaco: Mariana」 https://www.comunidad.madrid/node/83312

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音声合成: VOICEVOX / キャラクター: ずんだもん ・ 四国めたん