ロサリア受賞とニーニョ・ミゲル、カーニャの12拍【スペイン文化 2026/10/08】
2026-10-08 / スペイン便り
概要
ロサリアの国家現代音楽賞、ハビエル・マリアス資料の保存から、フラメンコを残す手仕事をたどります。
▼ 今日のトピック ・ニーニョ・ミゲル/ブランカ・デル・レイ/マイテ・マルティン ・田村兄弟のギター製作 ・パロ「カーニャ」の嘆声と12拍
▼ 関連リンク(アーティスト・パロ・工房) ・ニーニョ・ミゲル「ブレリア」 https://www.youtube.com/watch?v=4cpei0yTOPc ・ブランカ・デル・レイ「アレグリアス」 https://www.youtube.com/watch?v=blfRVCSe9to ・マイテ・マルティン「カンテ」 https://www.youtube.com/watch?v=gwklxyiRe08 ・カーニャのカンテとバイレ https://www.youtube.com/watch?v=Mklp9zj4_HM ・田村ギター演奏例 https://www.youtube.com/watch?v=fIxkgroJipU
#スペイン #フラメンコ #ずんだもん #四国めたん
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スペイン文化・フラメンコ便り(2026年10月8日)
オープニング:2026年10月8日 — スペイン文化・フラメンコ便り
- 今日の軸は「記憶を作品へ変える手」。ロサリアの受賞、ハビエル・マリアスの資料保存から、三つの祭、ニーニョ・ミゲル、ブランカ・デル・レイ、マイテ・マルティン、カーニャへ進む。
国際情勢(スペイン視点)
- 取得記事にはスペインが直接関与する新しい国際案件が乏しい。第三国の事件を並べず、文化・音楽という編集軸を守る。
スペイン国内ニュース
- CCOOとUGTは住宅価格と投機への対策を求め、11月11日のゼネストを呼びかけた。
- エル・ムンドは、スペイン世帯が動かさずに保有する資金を9430億ユーロと報じた。住宅不足と巨額の待機資金が同時にある点が争点である。
- 日本にも預金を厚く持つ家計は多いが、スペインでは住宅運動と労組の街頭行動が結びつきやすい。
文化・芸能ニュース
- ロサリアは2026年の国家現代音楽賞を受賞した。審査はアルバム『Lux』を「野心的、革新的、変革的」と評価し、12か月の世界ツアーにも注目した。
- 文化省は作家ハビエル・マリアスの個人資料を50万ユーロで取得した。タイプ原稿、手書き修正、記事、書簡が国立図書館へ入り、削除と推敲の過程も研究できる。
- 教員フランシスコ・ラミレス・ロペスは詩集『四本の釘』でロエベ詩賞を得た。創作をひらめきでなく、生活の中の反復する仕事として見せる三題である。
フラメンコニュース
- パンプローナ市はフラメンコ・オン・ファイアと連携し、エル・ペレのバルコニー公演と未成年向けギター・舞踊講習を組んだ。
- セビリア県ランテフエラの第31回祭とマラガ県アロサイナのアルメナ・フラメンカは、ともにカンテ、ギター、バイレを一つの番組へ置く。
- 三部門の名人芸だけでなく、歌の息、ギターの合図、足のレマーテの受け渡しが聴きどころだ。マドリードの国家ブランドとは別に、アンダルシアの小都市が生活文化を保つ。
フラメンコギタリスト列伝
- ニーニョ・ミゲル、本名ミゲル・ベガ・デ・ラ・クルス(1952–2013)はウエルバ生まれ。ギタリストの父ミゲル・エル・トマテから、港町のファンダンゴを学んだ。
- 1975年の第一作と翌年の『Diferente』という少数の録音が、後続の奏者に繰り返し参照された。
- 右手は太い親指の低音と、細い高音のアルペジオを一つの句で交代させる。ピカードは頂点だけへ置き、その後の休符で次の低音を大きく聞かせる。
- 左手は開放弦を残し、内声を半音で動かす。ウエルバの明るさを残しながら、解決直前へ濁りを置く。
- 精神疾患と依存症で長く舞台から離れた。病を天才の証しとして美化せず、作品の価値と支援を要した生活を分けて見る必要がある。
- 公開演奏『ニーニョ・ミゲル、ブレリア』では、親指の直後に高音を軽くし、休符を挟んで低音へ戻る呼吸を聴きたい。均す前に語る音を残した奏者である。
フラメンコバイレ列伝
- ブランカ・デル・レイ(1946年コルドバ生)は、マドリードのコラル・デ・ラ・モレリアを創作と上演の拠点にした。
- 代表作「ソレア・デル・マンタ」は、大判のショールを装飾でなく身体の延長にする。肩、肘、手首の順に力を伝え、布の端を一拍遅れて着地させる。
- サパテアードを連打せず、長いブラソの線から短いレマーテへ移る。音の少なさで観客の時間感覚を支配する。
- DeFlamenco公式収録『ブランカ・デル・レイ、アレグリアス』では、明るい曲でも腕を急がず、足の短い区切りで場面を閉じる箇所を見たい。
- タブラオを観光の見世物に限定せず、日々の営業と作品創作を接続したことも後進への遺産である。
フラメンコカンテ列伝
- マイテ・マルティン(1965年バルセロナ生)はレコードで歌を学び、1987年にラ・ウニオンのランパラ・ミネーラを受賞した。
- 低い声域でも輪郭が崩れず、子音の立ち上がりと母音の長さを細かく配る。大声より詩の文意が前へ出る歌唱である。
- フラメンコだけでなくボレロも歌う。ジャンルを混ぜるのでなく、歌詞を語る時間の取り方を共通軸にする。
- 公開演奏『マイテ・マルティン、カンテ』では、語頭を明瞭に置き、母音を細く保ってギターの返答へ空間を渡す箇所を聴きたい。
- 抑制された声でも、コンパスと詩を精密に扱えば緊張を作れることを後進へ示した。
フラメンコギター工房だより
- 全履歴の既出工房を避け、国外編として高知の製作家、田村満と田村廣を扱う。戦後の日本でスペイン式ギターを研究した兄弟である。
- 輸入楽器が限られた時代、実物を測り、表板の厚み、扇状力木、ネック角度を試作で確かめ、日本の湿度に合わせた。
- フラメンコ用は軽い胴と薄めの表板で、長い余韻より速い立ち上がりを優先する。田村ギターの演奏例では、低音の余韻が膨らみすぎず、高音のラスゲアードへ場所を譲る点を聴きたい。
フラメンコのパロ解説
- 今日のパロはカーニャ。ソレアに近い12拍系の古いカンテで、成立を一人へ帰せない。エル・フィージョやアントニオ・チャコンとの関係が語られる。
- 重く厳粛で、レトラの間に「アイ」という長い嘆声が入る。嘆声は次の詩節へ移る呼吸と調性の緊張を保つ。
- 三、六、八、十、十二拍付近に重心があり、十から十二、次の三へ回るまとまりを聴くとよい。
- 和声はフリジア旋法を基礎に、Aマイナー、G、F、Eへ降りる終止型を使う。
- 公開映像『カーニャのカンテとバイレ』では、長い嘆声の間もギターが12拍の帰着点を保ち、踊りが十拍付近からレマーテへ入る箇所に注目したい。
まとめ
- 10月8日は、賞や資料保存という公的な記憶と、舞台で受け渡す身体の記憶を結んだ。作品を残すのは天才の一瞬でなく、推敲、稽古、伴奏、製作を繰り返す手である。
参考ソース
- El País Cultura、El Mundo Cultura、パンプローナ市、ランテフエラ祭、マラガ県、DeFlamenco TV