生成AIは量子回路をどこまで短くできる?重要論文5本【2026/10/01】

2026-10-01 / arxiv 量子コンピュータ論文解説


概要

期間限定特集「生成AIで量子計算をつくる」。強化学習ルーティング、T数削減、LLM誘導探索、シュレディンガー橋による回路最適化を、計算予算と等価性検証まで含めて比較します。

▼ 今日の論文ラインナップ ・強化学習による量子回路合成とトランスパイルの実用化 — IBM Quantum(arXiv:2405.13196) ・動的二次割当問題として解く強化学習ルーティング — デラウェア大学ほか(arXiv:2605.12365) ・テンソル分解強化学習によるT数最適化の再現と汎用化 — マックス・プランク光科学研究所ほか(arXiv:2511.09951) ・言語モデルが探索方針を書き換えるT数最適化 — スベルバンク量子技術センターほか(arXiv:2603.29894) ・シュレディンガー橋による生成的な量子回路最適化 — チューリッヒ工科大学ほか(arXiv:2609.25947)

▼ 参考論文(arXiv) https://arxiv.org/abs/2405.13196 — 強化学習による量子回路合成とトランスパイルの実用化 https://arxiv.org/abs/2605.12365 — 動的二次割当問題として解く強化学習ルーティング https://arxiv.org/abs/2511.09951 — テンソル分解強化学習によるT数最適化の再現と汎用化 https://arxiv.org/abs/2603.29894 — 言語モデルが探索方針を書き換えるT数最適化 https://arxiv.org/abs/2609.25947 — シュレディンガー橋による生成的な量子回路最適化

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arXiv量子コンピュータニュース(2026年10月1日)

キーワード: 強化学習トランスパイル / 動的二次割当ルーティング / T数最適化 / 言語モデル誘導の進化的探索 / シュレディンガー橋 / 等価性検証

オープニング:2026年10月1日 — arxiv量子コンピュータ論文解説

期間限定特集「生成AIで量子計算をつくる」の3回目は、GQE(9月29日)、濱村一航氏の共著論文(9月30日)に続くテーマ別の最初として、トランスパイラと回路最適化を扱う。今日の quant-ph 新着には該当テーマの論文がなかったため、2024年5月から2026年9月22日までに投稿された5本を、回路最適化の層の順に並べる。1本目はIBM Quantumが強化学習で回路合成とルーティングを行い、Qiskit Transpiler ServiceのAIパスの土台になった2024年の論文、2本目はそのAIルーティングを比較相手に、ルーティングを動的な二次割当問題として定式化したトランスフォーマー方策の論文である。3本目と4本目はフォールトトレラント計算の資源指標であるT数の削減を扱い、Google DeepMindらのAlphaTensor-Quantumを大学の計算資源で再現・汎用化した報告と、強化学習で方策を学ぶ代わりに大規模言語モデル(LLM)に探索プログラムそのものを書き換えさせた研究を対比する。5本目は9月22日投稿の最も新しい論文で、拡散モデルの一種であるシュレディンガー橋を使い、入力回路から等価で短い回路を直接生成する。5本を通じて見るのは、学習したモデルが従来のヒューリスティクスのどの部分を置き換えたのか、出力の正しさを構成上の保証と事後の検証のどちらで担保しているのか、そして比較の条件(計算予算、データの分布、量子ビット数)がどこまでそろっているかである。

論文1: 強化学習による量子回路合成とトランスパイルの実用化

出典: Practical and efficient quantum circuit synthesis and transpiling with Reinforcement Learning. arXiv:2405.13196 (2024, v2 2025).

IBMが提供するQiskit Transpiler ServiceとそのAIトランスパイラパスがこの手法を土台に作られたと論文自身が述べており、今日の2本目でも比較相手として使われているため、回路最適化への機械学習応用の基準点として選んだ。著者はIBM Quantum(トーマス・J・ワトソン研究所)のDavid Kremer氏、Victor Villar氏、Hanhee Paik氏、Ivan Duran氏、Ismael Faro氏、Juan Cruz-Benito氏の6人で、初版は2024年5月、第2版は2025年2月の投稿であり、今日の新着ではない。トランスパイルでは、回路の一部を同じ演算子のより短い回路に置き換える再合成と、接続制約を満たすためにSWAPを挿入するルーティングが中心になる。著者らは既存手法を、速いが最適から遠いヒューリスティクス、6量子ビットのClifford最適回路で約2か月の計算と2.1TBを要したような最適回路データベース、接続制約に柔軟だが量子ビット数に対して指数的に重くなるSATソルバーの3種に分け、その間を埋める手法を狙った。合成は逐次決定過程として定式化される。目標の演算子O₀から出発し、各ステップで方策ネットワークがゲートを1つ選んで演算子を更新し、恒等演算子に到達したらゲート列を逆順にして回路を得る。報酬は恒等への到達に大きな正の値、ゲートごと(2量子ビットゲートはより重く)と深さの増加に小さな罰則を与える。ラベル付きデータは使わず、d個のランダムゲートで作った演算子を難易度dとして、成功率が閾値を超えるごとに難易度を上げるカリキュラム学習を行う。7量子ビットのCliffordでは、位相ベクトルを除いた14×14のブール行列を7×7×4のテンソルにして入力し、接続グラフ上で可能な26通りのH、S、CNOTから選ぶ。ネットワークは畳み込み1層と全結合2層の約130万パラメータで、推論時は貪欲選択、サンプリング、LLMのデコードに似た上位k探索を使い分ける。学習はPPOで、A100 1基で数分から48時間未満だった。

置換回路の合成では、8量子ビット線形接続で100回の試行によりSWAP数と深さの両方で100%、12量子ビットの別のトポロジーで65%の問題が最適解に一致し、RLは100回試行しても合計1秒未満だったのに対し、SATソルバーは12量子ビットで平均5時間を要した。27量子ビットと65量子ビットのheavy-hex接続では、QiskitのTokenSwapper(100試行)よりSWAP層が約50%少ない。6量子ビットのClifford合成では、1回の試行でGreedy合成とSABREルーティングの組合せと同程度の時間でCNOT層を60%減らし、100回(約1秒)で最適解との差が平均2層以内になった。ルーティングでは、8〜10量子ビットの量子ボリューム回路を線形接続に載せる固定サイズの問題で、10分の時間制限を付けた整数計画ベースのBIP mapperよりCNOT深さを約20%減らし、133量子ビットのibm_torinoでは、SABREの構造を保ったままSWAP選択の評価関数だけを学習した汎用版を8回反復し、Qiskit SDK 1.0の最適化レベル3より平均で約40%浅く、2量子ビットゲート数で約10%少ない回路を得た。著者らは、別グループの独立ベンチマークで、この手法を含むサービスが900量子ビット・100万個の2量子ビットゲートまで動作し、他のライブラリより深さと2量子ビットゲート数で平均約30%以上良かったと引用している。限界として、合成が示されたのは線形関数9量子ビット、Clifford 11量子ビット、置換65量子ビットまでで、回路が大きくなるほど学習の収束が遅くなる。モデルは回路の種類と接続トポロジーごとに別々に学習する必要があり、SAT解との比較は小規模に限られる。ルーティングの比較はQiskitの既定設定やBIPの時間制限など条件の異なる相手とのもので、実機での実行結果の比較は含まれない。

論文2: 動的二次割当問題として解く強化学習ルーティング

出典: QAP-Router: Tackling Qubit Routing as Dynamic Quadratic Assignment with Reinforcement Learning. arXiv:2605.12365 (2026).

論文1のQiskit AIRoutingを比較相手に含め、ルーティングを汎用の逐次決定問題として扱うのでなく、問題の構造を報酬とアテンションの両方に埋め込むという方向を明確に示しているので選んだ。著者はデラウェア大学のKien X. Nguyen氏とIlya Safro氏、富士通リサーチ・オブ・アメリカ量子研究室のAnkit Kulshrestha氏とXiaoyuan Liu氏の4人で、2026年5月の投稿である。ルーティングはNP困難で、局所的なSWAP選択の影響が後の層へ累積する。著者らは、HPCで通信の多いプロセスを近いプロセッサに置くトポロジー考慮の割当に着想を得て、各時間スライスの2量子ビットゲートを流量行列F_t、デバイスの結合グラフ上の最短距離を距離行列D、論理から物理への割当を置換行列X_tとし、ルーティングを割当が時間とともに変わる動的な二次割当問題(QAP)として書いた。各SWAPは置換行列に互換を掛ける操作になり、隣接した量子ビット対のゲートはその場で実行済みとして流量行列から消える。報酬はQAPの目的関数の減少分に、SWAP1回ごとの負の定数と、実行可能になったゲート数に比例する項を足したものである。

$$ r_\tau = \lambda_{\mathrm{QAP}}\left[\mathrm{Tr}(F_{t,j} X_{t,j} D X_{t,j}^{\top}) - \mathrm{Tr}(F_{t,j+1} X_{t,j+1} D X_{t,j+1}^{\top})\right] + \lambda_{\mathrm{swap}}\,\beta + \lambda_{\mathrm{gate}}\,|\mathcal{G}_\tau| $$

先読みは、先のH個のスライスの流量行列を減衰率γで重み付けして足した実効流量で表し、方策ネットワークでも論理量子ビット側のアテンションをこの実効流量で、論理と物理を融合する層のアテンションを実効流量と距離行列の積でスケールする。学習はランダムな2量子ビットゲート列とランダムな初期割当でPPOにより行い、評価では論理と物理の量子ビット数を等しくした最も厳しい設定で、初期割当を自明な対応に固定し、1量子ビットゲートを除いて、挿入されたCNOT数(SWAPは3個、BRIDGEは4個に換算)を比べた。

評価回路はMQTBench、組合せ最適化12問題の最適化済み回路集AgentQ、QUEKOのQAOA-MaxCutから選んだ12、16、20量子ビットの計1,831本で、デバイスは2次元格子とIBM Tokyo型の2種類、比較相手は貪欲法、QiskitのBasicSwap、SabreSwap(基本と先読み)、pytketのLexiRouting、Qiskit AIRoutingである。14設定中11設定で最少のCNOT数となり、2次元格子の12量子ビットでは、MQTBenchでAIRoutingの108.09個に対し91.10個、AgentQでAIRoutingの100.83個に対し70.20個、20量子ビットのQUEKOではSabreSwap先読み版の117.28個に対し103.08個だった。要旨の「15.7%、30.4%、12.1%削減」は、表の値から計算するとこの3設定での最良の既存手法との差に一致し、各データセットで差が最も大きい設定の値である。16量子ビットの2次元格子ではMQTBenchで7.6%、AgentQで18.0%の削減にとどまり、20量子ビットのMQTBenchでは2次元格子(SabreSwap先読み版421.45個に対し428.58個)とIBM Tokyo型の両方で既存手法を下回った。先読みの長さを2から10まで変えると、長いほどCNOT数が減る傾向が出た。比較条件について著者ら自身が、公開APIで設定できる範囲でしか既存手法を動かしておらず計算予算はそろっていないと明記しており、AIRoutingは低い設定でも32回のルーティングを行うのに対し、この手法は往復3回である。限界として、量子ビット数ごとに別の方策を学習する必要があり、評価は20量子ビットまで、指標は追加CNOT数のみで深さや実機での忠実度は測っていない。著者らは、回路とデバイスのグラフを直接扱うサイズ非依存の構造を今後の課題に挙げている。

論文3: テンソル分解強化学習によるT数最適化の再現と汎用化

出典: Reusability Report: Optimizing T-count in General Quantum Circuits with AlphaTensor-Quantum. arXiv:2511.09951 (2025).

Google DeepMindらが2024年2月にarXivへ投稿したAlphaTensor-Quantumは、強化学習によるT数削減の代表例だが、原論文の計算にはTPU 3,600基超が使われ、学習コードの中核は公開されていない。その再現可能性と、大学の計算資源での汎用化を第三者が検証した報告として選んだ。著者はマックス・プランク光科学研究所とエアランゲン=ニュルンベルク大学のRemmy Zen氏、Maximilian Nägele氏、Florian Marquardt氏の3人で、2025年11月の投稿である。フォールトトレラント計算では非CliffordのTゲートの実装コストが大きく、T数が資源の一次指標になる。AlphaTensor-Quantumは、CNOTとTからなる回路の非Clifford部分を対称なシグネチャーテンソルで表し、T数の最小化をそのテンソルの低ランク分解として解く。補助量子ビットを使ってT数を減らすガジェットを行動に含め、テンソルの対称性を利用した対称化軸方向アテンションで量子ビット数の拡大に対応していた。再現では、公開されたGitHubの実装(TensorGameとネットワーク、公開MCTSライブラリMCTXへの組み込み)を使ったが、原論文の結果はこの実装で得たものではない。原論文のバッチサイズ2048とMCTSシミュレーション800回は40GBのA100でメモリ不足となり、公開実装の既定値128と80で動かした。シグネチャーテンソルが公開されていたMod 5₄(5量子ビット)、NC Toff3(7量子ビット)、Barenco Toff3(8量子ビット)の3回路では、ガジェットありのNC Toff3とBarenco Toff3で原論文よりT数が高く、バッチサイズとシミュレーション数を2倍にするとそれぞれ8と10まで下がった。学習は約3,000ステップ、回路の大きさに応じて100〜1,000秒で収束した。ほかの結果は、回路からテンソルを作る手順と各実験のハイパーパラメータが原論文で示されておらず再現できなかったとしている。

計算時間の面では、回路ごとに学習し直す原論文の方式は、ゲート数を量子ビット数の10倍にしたランダム回路で学習時間が量子ビット数に対して指数的に増え、15量子ビットではQuadro RTX 6000とV100がメモリ不足になった。PyZXとTODDの組合せは15量子ビットでも約0.06秒で最適化済み回路を返すため、著者らは原方式のコストが見合うのは多くの応用で使われる重要な部品回路に限られると述べる。そこで、5〜8量子ビット、ゲート数が量子ビット数の5〜15倍、Tゲートが20〜60%のランダムなCNOT+T回路で、量子ビット数を混ぜて学習する汎用エージェントと、量子ビット数ごとの個別エージェントを、合成デモの模倣のみ、強化学習のみ、両者の併用の3通りで10万ステップ学習し、量子ビット数ごとに1,000本の評価回路でPyZX+TODDと比べた。汎用エージェントは平均T数で個別エージェントを一貫して上回り、デモと強化学習の併用が最も低い平均T数を出してベースラインを下回った。一方、ベースラインに勝つのは5、6量子ビットで、7量子ビットでは併用版以外が後退し、8量子ビットではすべてのエージェントが平均でベースラインを下回った。学習済みエージェントは1回路あたり約20秒の推論で済み、学習に使わなかった上記3回路では、デモのみで学習した汎用エージェントがガジェットの有無の両方で原論文の値(なし7、13、13、あり2、4、4)に一致し、強化学習を含む2種は少し悪かった。限界として、検証は8量子ビットまでで、ハイパーパラメータ調整もしておらず、原論文との計算量の差(学習ステップ10倍、MCTSの軌道10倍、バッチ16倍)は大きい。入力回路はあらかじめPyZXで最適化したものであり、T数以外のコストは評価していない。

論文4: 言語モデルが探索方針を書き換えるT数最適化

出典: LLM-Guided Evolutionary Search for Algebraic T-Count Optimization. arXiv:2603.29894 (2026, v2 2026).

論文3が強化学習で行動を選ぶ方策を学んだのに対し、この研究は代数的な更新規則を固定したまま、どの更新を選ぶかという探索プログラム自体をLLMに進化させており、同じT数最適化で生成AIの使いどころの違いを比べられるので選んだ。著者はスベルバンク量子技術センターとモスクワ大学のDaniil Fisher氏、Mikhail Saygin氏、Stanislav Straupe氏、人工知能研究所AIRIのValentin Khrulkov氏とIvan Oseledets氏の5人で、初版は2026年3月、第2版は2026年8月の投稿である。アダマールを含まないCNOT+T回路の非Clifford部分は位相多項式で書け、奇数係数の項のパリティベクトルを列に並べたパリティ行列Pの列数がT数になる。二つのパリティ行列が同じ非Clifford位相を表すのは、次の3階シグネチャーテンソルが一致するときに限られるので、T数の最小化は同じテンソルを持つ最小列数の行列を探す問題になる。

$$ S_{\alpha\beta\gamma}(P) = \sum_{j=1}^{m} P_{\alpha j} P_{\beta j} P_{\gamma j} \pmod 2 $$

TODDとその改良版FastTODD、TOHPEは、テンソルを保つ更新P′=odd(P⊕zyᵀ)で重複列や零列を作って消すが、許される更新のうちどれを選ぶかは即時の削減量を優先するなど事前に固定されている。著者らは、最大削減を選ぶ貪欲法と最小の正の削減を選ぶ貪欲法で最終T数が変わる例を示し、この選択を方策として外に出したVarTODDを作った。方策は二つの候補生成器への評価予算の配分、候補プールの大きさ、スコア関数、最終選択規則、現在のT数に応じたスケジュールやビーム幅を決める。その外側で、LLM誘導の進化的プログラム合成フレームワークGigaEvoが、方策の探索手順を定義する「チューナー」プログラムを親のコードと実行診断からLLMに書き換えさせる。LLMにはDeepSeek V4 FlashとGPT-5 miniを混ぜて使った。アーカイブは、常に元の行列から始める島、検証済みの途中の行列から再開する島、良い軌跡の終盤から再開する島の3つに分けたMAP-Elites方式である。生成された行列は外部の評価器がシグネチャーテンソルを計算し直して一致を確認し、生成コードはこの判定を変更も回避もできない。

有限体GF(2ⁿ)上の乗算回路16例では、12例で既存の最良値を下回り、GF(2³)、GF(2⁴)、GF(2⁶)、GF(2⁸)の4例で一致し、平均の相対削減は7.0%だった。初期分解の違いによる2系統のうち同じ系統どうしで比べると、GF(2⁵)ではAlphaTensor-Quantumの59に対し49、GF(2¹⁰)ではFastTODDの173に対し157、48量子ビットのGF(2¹⁶)ではFastTODDの423に対し383、192量子ビットのGF(2⁶⁴)では3,815に対し3,729となった。AlphaTensor-Quantumの値が載っているのは30量子ビットのGF(2¹⁰)までで、それより大きい例の比較相手はFastTODDである。一方、GF(2⁶)では77に対し79、GF(2⁹)では161に対し165と、系統によってはAlphaTensor-Quantumより高い値もあり、表ではもう一方の系統で最良値に並んでいる。追加の24種のベンチマークでは、Ham15(中)が137から135、Ham15(大)が639から631に下がり、残りは最良値と同じだった。GF(2³²)の探索では360個のプログラムが生成され、初期集団で最良のチューナーの1,205から1,177まで下がった。GF(2¹⁶)で乱数種などを変えた7回の独立実行では、4回が383、2回が385、1回が387で、実行間のばらつきは小さい。候補プログラムは12個のCPUコアで並列に評価され、GF(2⁶⁴)では1プログラムに最大3時間を割り当てている。限界として著者らは、T数は物理的な総コストを決めず、GF(2ⁿ)乗算のような算術ではToffoliやCCZで直接合成した方が安くなる場合があると述べる。探索は回路ごとに進化をやり直す方式で、一度学習した方策を新しい回路へ転用する強化学習とは再利用の仕方が異なる。多くの例で外側の進化は1回しか走らせておらず、LLM API費用の総額も本文には数値として示されていない。

論文5: シュレディンガー橋による生成的な量子回路最適化

出典: Bridge of Ψ's: Quantum Circuit Optimization with Schrödinger Bridges. arXiv:2609.25947 (2026).

9月22日投稿の今日の5本で最も新しい論文で、書き換え規則の選択や探索ではなく、入力回路から等価で短い回路を生成モデルが直接出力するという、4本とは異なる形を取るので選んだ。9月30日の拡散モデル論文が目標のユニタリを条件に回路を生成したのに対し、こちらは元の回路そのものを出発点にする。著者はチューリッヒ工科大学のLino S. Hofstetter氏と、ケンブリッジ大学のLia Yeh氏、Prakash Murali氏の3人である。通常の拡散モデルがガウス雑音からデータへ運ぶのに対し、シュレディンガー橋は二つのデータ分布の間を基準の拡散過程からなるべく外れずに運ぶ。著者らは対になった端点を仮定するI2SBの定式化を使い、元の回路を一方の端点、最適化後の等価な回路をもう一方の端点として、ゲート集合{H, S, S†, T, T†, CX}のClifford+T回路を量子ビット×時間の格子で表す。デノイザーは既存のU字型拡散トランスフォーマー(U-DiT)を回路向けに改め、時間軸だけを縮約して量子ビット方向の解像度を保ち、量子ビットの並べ替えに対する同変性とグループ化したアテンションを入れた9,880万パラメータのネットワークである。学習データは書き換え規則を逆向きに使って作る。小さなランダム回路を2,763個の規則(手書き36個、ソルバーで採掘した2,727個)で縮めたものを目標、86個の規則を逆に適用して膨らませたものを入力とするので、対は構成上等価で、学習中にユニタリの計算も等価判定も要らない。8量子ビット×深さ64の主コーパスは約195万対で、入力の平均41.9ゲートに対し目標は18.0ゲートであり、テスト回路の56.7%で目標は既存7設定の最良出力より短い。学習はGH200 8基で15万ステップ、45GPU時間だった。推論では1回路につき64候補を各128ステップで生成し、ゲート数の少ない順に等価性を検証して最初に通ったものを採用する。10量子ビットまではユニタリの内積から厳密に、16量子ビットではZX図の段階的な簡約で判定し、判定できなかった候補は採用せず、どれも通らなければ元の回路を返す。

同じ生成手順で作ったテスト回路2,686本では、32列ごとの窓に分けて最適化する方式でゲート数を幾何平均で2.46分の1、深さを2.45分の1に減らし、96.5%の回路を短くした。9つの比較設定で最も強いQUESOは2.11分の1で、目標と同じ長さに達した割合はQUESOの26.1%に対し77.2%、目標より短くできた割合はQUESOの14.6%に対し11.7%だった。PyZXのfull_reduceは1.99分の1、Qiskitの最適化レベル3は1.22分の1である。ただし計算の条件は異なり、既存手法はCPU 1コアで1回路0.03〜5秒、この手法はGH200 1基で窓方式14.4秒、全体方式4.8秒かかる。デノイザーの比較では、同じデータと手順で短くできた回路の割合が標準のU-Netで40.6%、元のU-DiTで76.2%、改良版で88.9%だった。学習分布の外の評価として、既存の最適化器の論文で使われたFeynman、GUOQ、QASMBenchなどの回路のうち8×64の格子に収まる68本では46本を短くし、深さの削減は1.08倍で最良の既存手法と並んだが、ゲート数は1.13倍で既存手法の1.08〜1.26倍の範囲の中にとどまった。16量子ビット×深さ192への追加学習(10GPU時間)では窓方式で98.4%の回路を短くした一方、全体方式では等価性を判定できない候補が残る回路が23.9%あった。長い回路は苦手で、8×512のモデルの全体方式では改善率が32層以下の74.1%から257〜512層では1.1%に落ち、窓方式でも同じ入力に対するゲート数の削減は1.23倍で、PyZXのfull_reduceの18.0倍に遠く及ばない。主な優位は訓練データと同じ逆書き換えで作った回路上のもので、著者ら自身、構造化された算術や化学の回路での学習、全体を覆うアテンション、未判定を減らす検証を今後の課題に挙げており、接続制約を考慮したルーティングへの拡張もまだ行っていない。

参考ソース

  • 論文1: Practical and efficient quantum circuit synthesis and transpiling with Reinforcement Learning. arXiv:2405.13196
  • 論文2: QAP-Router: Tackling Qubit Routing as Dynamic Quadratic Assignment with Reinforcement Learning. arXiv:2605.12365
  • 論文3: Reusability Report: Optimizing T-count in General Quantum Circuits with AlphaTensor-Quantum. arXiv:2511.09951
  • 論文4: LLM-Guided Evolutionary Search for Algebraic T-Count Optimization. arXiv:2603.29894
  • 論文5: Bridge of Ψ's: Quantum Circuit Optimization with Schrödinger Bridges. arXiv:2609.25947

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